嗚呼其の声は何時までも愛しく



「えっ・・・今どこって・・・」
「だーかーらー大会でこっち帰ってきたって」
もう何ヶ月ぶりか覚えていない。
途中までは女々しく数えていたけれど、20ヶ月目に入ってようやく数えるのを断念したのだ。
ゾロは高校を卒業と同時に上京した。
剣道で有名なところなのだと、興味なさげに答えられたときはいささか落ち込んだ。
ああそうかここを離れることをなんとも思っちゃいないのかと。
そんな事を考えたのもそれなりにゾロには好かれている自信があったから、かもしれない。
(この自信は 友達としての、というものだが)
だから自分はそれからゾロにも会わず、いつのまにか俺は18になっていた。

少しだけ年月を費やしすぎていて、電話ごしの声は自分の脳裏で美化された姿を思い浮かばさせた。
明日が試合だから。
だから何。見に行けとでも。
いきなり現実を見るのはあまりに恐ろしい。
彼女が居るかもしれない。
俺の知らないゾロかもしれない。

むかしのひととあつかわれるかもしれない

着信履歴を二、三度見直して、それからベッドにほうりなげた。
悪い事は考えたくない。
悔しいけれどこれだけのことにうかれている自分が居る。
明日、その顔を見た瞬間抱きしめることばかりを考えながら眠りについた。




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