其の目が赤に変わる時



「サンジ」
懐かしい声で呼ばれた、胸のうちはもうがたがただ。
「ごめん。。試合見れなかった、道に迷って」
自分の街で迷うことなど目の前の男以外に考えられることではない、本当は会うのを戸惑ってしまってゾロの顔も見ずに帰ろうとした、それが見つかってしまったのだ。
「いい、負けたし。」
「・・・お前が?」
「悪いか。」
そっけない口調は変わらないままで、いささか安心させたが、やはりその瞳は少し自分にはきつすぎて目をそらした。
「いつぶりだ」
「しらねぇ」
「ずっとお前逃げてたからな、俺から」
「はぁ?逃げてなんかねぇし」
嫌な口ぶりで攻めてくるのは気のせいか。
逃げたのはお前じゃあないか。
何も言わずにこの街から消えたのは俺じゃなくお前だ。
頭の中はひどく震えてしまって僻んだ考えしか出てこない。
待ちわびた男を前にして、ずっと言いくて仕方なかった“会いたかった”の一言が言い出せないでいる。





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