二ヶ月目の喫茶店で



深くため息をついたのが聞こえた。
気付けば俺は窓の外を見ていて、会話がないその場には食器の触れ合う音と隣のカップルの話し声が少し聞こえるだけだった。
ウソップに久しぶりに話そうじゃあないかなどという珍しい声がかかったのにこの有様だ。
ウソップは再びため息をついて、口を開いた。
「まぁ誰のご命令かは察しはついてんだろうけど」
「愛しのナミさん?」
「分かってるなら。。まぁいいけど」
いつもゾロと居る俺を一番嫌っていたのは彼女なのに、いざ連絡を途絶えさせると一番文句を言ってきたのは彼女だった。
あああんたのうじうじじめじめが移っちゃうわと口が開けばそれだった。
「二ヶ月もそれじゃあ俺でも心配になる」
ウソップが氷が解けてしまったオレンジジュースを飲むとふたたびカップルの声が聞こえてくる。
まったく、今日はなにもかわりばえのない日だ。
それなのに二人は悼むようにあの男を脳裏に浮かべている。
「おまえ、仲良かったから」
すこし心が痛んだ。
いつかあの男の唇をまじまじと見つめた時の事を思い出してしまう。
仲がよかったように見えていたのだろうか。
ナミさんにも。ウソップにも。
どちらにしろ昔の話をする人達では無いのにもうふた月もこの有様だ。
思い出と化すはずの男が開けた穴は大きい。
街を捨てた、あれの。
「お前1ヶ月したらひからびて死んでんじゃねぇの」
「ははっありえねぇー」
コップの下の水たまりをぼんやり見つめながら乾いた笑いをみせた。
本当にそんなことは有り得ない。
俺はこの街で生き抜いてみせる。





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