長い月日、ゾロの場合



荷物は少しの服と道具だけで来てしまった。
残りのものは、まぁ少しばかりしかないのだけれど置いてきた。
断つとか消えるとか置いてゆくとか、そんなものは関係ない、ただ自分が剣道が出来ればそれで良かったと思っていた。
第一自分が居る場所に執着心もない。
これが普通ではないか。
そう思いながらも荷物を置いてきてしまった。

きっと来るはずだった連絡が来ないまま、月日は過ぎてしまった。

「皆が、会いたいって」
微妙な間の沈黙をサンジが少し震えた口で破った。
「そう」
前は何を話していたか、と少しだけ思って辞めた。
しかし思い出は鮮やかに頭を巡り、更にゾロをぎこちなくさせた。
過去を引きずっているわけではない。そう思いたい。
ただ、予定外だったのだ。
気の軽い声の知らせが来る筈だった。
こいつはマメな男だから、だから。

嗚呼こんなにも時間を費やしてしまうなんて

秋に似合わない生ぬるい風が吹き、とうとう耐えられずにゾロは立ってしまった。
そもそもサンジを呼んだのは何故だったのか、今になっては自分の頭が信じられない。
「じゃ行くから」
それは別れの言葉に近かった。
過去の思い出はここで終わらせてしまえばいい。





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