[They think that oneself each other is losing] 「何?手?」 サンジが何時になく優しい声でそう言った。 しまった、と思った。 オレの横ではオレよりいくらか余裕なソイツがタバコを咥えている。 起き上がることすら出来ないオレ。イラついた。 更には心の奥まで見られてしまった。つい舌打ちをしそうな口を慌てて噤む。 手を差し伸べたわけでもないのに、オレの顔を見ただけで感づくな。 そうだよ、手を繋ぎたいんだ、と言えればどれだけ楽だろう。 でもそんなのオレが許さない。 優しい笑みを浮かべたサンジの手を、右手で振り払った。 気だるくて、その勢いがない行動があまりにサンジを誘っているようで悔しかった。 嗚呼、どうしてコイツは。 そう思うととても恥ずかしくなった。 しかしそれなら常にコイツはオレに愛の言葉を求めるのだろうか。 残酷だ。 あまりに残酷すぎる。 いつだってそうだ、この前だって、最中にすがり付いて泣いてきた。 どうしてオレだけがこんなにも好きなんだよ。と。 なら、どうだ、オマエの前で揺さぶられている惨めな男は、誰にでも股を開くど阿呆だとも思って抱いているのか。 筋肉質な男が好みの奴の為に、毎朝筋肉トレーニングをしているとでも?? ・・・んな事あるわけないだろう。 薄っぺらい言葉で言い表せるような気持ちは生憎持っていない。 そんな曖昧な気持ちだけでオマエを許す筈が無い。 好きだ。 言えば気が済むなら、許してやるものか。 でもどうして。 オレの心を。 もしかしたら知っていて虐めているのか、自分が惨めな男を装っているのか。 ・・・オレのことを好きな自分に心底腹を立てた上での愚痴なのか。 どちらにしても気分が良い話でない。 オレのやる事を読むのなら、それでも良い。 全て知っているのなら、全て信じればいい。 「人の心を読むなよ馬鹿。」 すれた声でそう呟くと、何が?とたいそう優しい声で聞いてきた。 コイツはその「何」でさえ読んでいるくせに。 悔しい気持ちでいっぱいにしてしまったが、それでも優しく微笑んでくるサンジに惑わされて、邪気に満ちた顔がほころんだ気がした。 きっとこの顔でさえサンジを誘っているんだ。 嗚呼。 それでも、手を繋ぎたかった。 いつも冷たいその手に右手を伸ばして、間に空気でさえ邪魔しないように手を握った。 サンジのほうが暖かかった。 それですらイラついたが、何故か少しホッとして目を閉じた。 きっと、なんでも知っているんだ。 この手は。 オレの体ですら知ってしまったのだから。 なんだかまた悔しい気持ちになってきた。 「好きなんて言ってやるものか。」 そう呟いてから、眠ることしにた。 きっと、オレより惨めなサンジには聞こえていないだろう。 好きなんて言ってやるものか。 そう思いながらも感じるものは、サンジの暖かい左手だった。 <END> |