[I am embraced in you and want to die] 分かってるわかってるそんな事誰に言われんでも分かっている。 それなのに人に言われてむしゃくしゃするなんて子供だってのも分かっている。 頭を精一杯掻き毟る。 こんな時に足を出せばモノが壊れるし、口を開けば無視をされる。 だから何も言わずに頭を掻き毟る。 ああイライラする。分かってる。分かってるのに。 独占欲がどうのこうのと言われても、そりゃ独り占めにしたいときはなるだろ。 束縛とかなんとか言われても、そりゃ縛りつけてしまいたい時だってあるだろ。 誰だってそうだろ。 少なくともオレは不安でたまらない。 例えば、少し変わった例の持ち主であったりするとき 例えば、オレだけが人と違う事をしそうになったとき 例えば、すぐ側にある死にふと恐れを感じたとき 人はどうするかって。 普通ならどうするってんだよ。 畜生。 ぐるぐるぐる頭を回る。 「あんただけのモノじゃないのよ。勘違いしないで。」 何も言い返せなかった。口だけの笑顔を差し上げただけだ。 だってそりゃ彼女の気持ちだって知ってるし彼女の精一杯の嫌味の言葉だと知ってるから。 だから何も言い返せなかった。 ただ、とてつもない不安とこの空を見ても爽快感も何も感じなくなったのはソレのせいだ。 頭を掻き毟る。 「バカだな」 原因がオレの真ん前にしゃがんで言った。 頭を抱えてみかん畑の中で座ってたオレに、吐き捨てるように。 無断でその足を蹴ったが見事避けられた。 どうしようもなくてもう一度頭を抱えて、なるべくゾロが見えないようにした。 「オマエ何も良い事ねぇからどっか行け」 精一杯気の強い感じで返したつもりだ。 でも、かぼそいとしか言いようのない声が出た。 それから少し、変な間が有ってからゾロが立つ気配がした。 「バカだよオマエ」 訳が分からなくなる。 「オマエがオレのもんになれよ。」 吐き捨てた。 バカだ。ナミさんの思うままだ、と頭の中でぐるぐる思った。 もうどうなっても良かった。 ただ、ゾロ。オマエはもうどっか行け。行ってくれバカ。 右の髪の隙間から光が入ってくる。 眩しくて眩しくて、そのまま気が遠くなってしまえば良いのにと思った。 だけどその願いも空しく、光は遮られた。 ・・・ゾロの手に。 髪をすくわれた。 予想外の出来事に、思わずゾロを見てしまった。 笑ってる。きっとオレにしか見せないような笑顔で・・・笑って。 キスをもらった。 それはそれは優しいキスで、なんだコレが鎮痛剤かよと思って泣きそうになった。 名残惜しいが、その唇は離れて、それでもまだ触れそうな所で、こう言い放った。 「誰のモンにもなんねぇよ、バカ」 ゾロはまた笑った。 それに対抗して笑ったが、涙が襲ってきてどうでも良い笑い方をしてしまった。 まぁゾロしか見てないと思ってそのままにした。 やはりオレはバカだった。 <END> 私もバカだった。 |