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[rides on sweet temptation] 迫る唇に、思わず手のひらを向けた。 ギリギリなのは、サンジの心とゾロの隙間無く閉じた唇で、遮った手のひらを眺めて、お互い何かと焦った。 元はと言えば、ゾロが悪かった。 サンジの必死に堪えた感情に薄々気づいていた筈なのに、意味も無くキッチンなどに居たりするからだ。 落ち着かない体をサンジに向けて座らせ、食器を洗うその手を見つめる視線を、サンジが気づけば逸らす。それをサンジが許すわけがなかった。 「ん?何が欲しいんだよ。」 少し目を細めて、それでも皿から目を離さずに余裕を持って言ったつもりだったが、後ろから聞こえる少しどもった声を聞けばすぐに余裕が無くなってしまった。 振り向けば、やはり落ち着かなくて少しだけ頬を赤らめた(ようにサンジには見えただけなのだけれど)顔がテーブルの木目に沿って動いていた。 変わった恋の仕方をしてしまったと思い続けたサンジには余にも素敵なチャンスであった。 それで、今だ。 「なんのつもりだ。」 指の隙間から見える目はどう見ても獣であって、サンジはいささか焦ったが、自分の場違いだった行動にありがたみを感じながら口だけで笑った。 「そんな恐い顔するなよ」 遮った手を掴んで、更にゾロに近付く。先に先にと急ぐ首が延びて、ゾロは自分を支えた手で無理矢理もう一度防ごうとしたが、それすらもサンジに握られた。 体が後ろに崩れる。 獣の目がサンジの金色の髪を妖しく映すのでさえ、今のサンジには愛しく思える。 両腕を掴んだ手が少しきつくなる。来る。そうゾロは思った。 あっけなく来た。但し、サンジの唇が重なった場所はゾロのおでこだ。咄嗟にしてしまった頭突きは綺麗にサンジの鼻と口にぶつかってそのままつんのめってしまい、体制はあっという間にゾロが有利に成った。 目の前の男は肝心なところに限って不器用で阿呆だ。そうゾロは思ったが、それはそう思わずには居られない状況であったからだ。 すぐに唇を噛んだ。 「知ってんだろ」 そう言われて、ゾロはとっさに掴んでしまっていたサンジの両腕を離した。 不本意に組み敷かれたサンジの声は落ち着いてしまって、感情と関係無しにゾロは冷や汗をかいた。 動揺する事の無い目が、ゾロを見つめる。 「お前だってオレの事・・・」 「それ以上言ったら殺す!!」 ついカッとなって、サンジの胸倉を掴んですぐに離した。 後ろの床にサンジが倒れこむ。 「いってぇ・・・」 「おいコック、勘違いするな。オレはお前につまみを頼みに来ただけだ」 気を抜けば、きっと顔を真っ赤にしてしまう。 だけど、ゾロの台詞の後のサンジの紳士らしい行動に救われて、そのままゾロは口を抑えてキッチンを出て行った。 ズキズキと痛むのは、サンジの頭とゾロの心で、どちらも痛みを抑えるために其処を拳で軽く叩いた。 もしこれが普通ならば、キスだって舌まで入れるほどの関係なのにと思った。 <END> |