(現代パラレル) 強い日差しはそれに小さな影を作っている。 そのまわりのアスファルトはきらきらと、まるで鏡であった。 少しのめまいを感じながら、サンジはセミの声とそれからつい先ほどからのビニルの音を聞いた。 「ファンタは駄目。俺の。」 「のまねぇよ。」 その声は低く乾いている。 でもゾロはきっと何も飲まない。 少し意地悪をしてみた。 先ほどレジに並んでゾロが自分から離れたとき、目の前の棚に奴が率先して選んだオロナミンCを置いてきてやった。 それを今まで気づかなかったゾロが悪い。 「おい炭酸しかねぇ」 「おかしい、買ったぜ」 語尾が少し震えてしまって肩も堪えたのに震えてしまって、それでもゾロは何も気づかずに手を動かした。 こちらを見ないゾロが悪い。 今度は堪えず少しだけ笑った。 胸がつっかえるのは、めまいのせいだけではない、それに暑さと目の前の其れで溶けてしまった自分の顔。 その顔がゾロに腕を絡ませるのも少しの迷いもなく。 「やめろっこらハゲ」 「ハゲじゃねぇまだボーボーじゃ」 逃げる腕も捕まえてしまって、さぁどう歩こう、という姿勢になったとき、辺りを見渡せばやはり鏡ばかりで。 「こんなところでって言う?ネコでも気にするかお前は」 「でも公共の場だお前アホか」 少し開いた口はもうすぐそこ、息もかかるその生ぬるさは例えば此処に今若いカップルが来たとしてもこの隙間を譲れない。 一人、興奮しているだなんて思わせられないような、すぐさま出来た空気の甘さ。 「喉、乾いたんだろ?」 なぁ、と少し頭を傾けてやろうとしたすぐ後。 2秒後、いや1秒も経っていなかったかもしれない。 めまいはその石頭のおかげで一層ひどくなった。 それでもその瞬間の少し鼻に寄りがちだけど、近づいた唇を鮮明に思い出す。 別にいいけどね後でさ・・、そうもしサンジが言ったならば、次の言葉は聞けていなかったかもしれない。 「もーいいお前ん家でシャワーあびる!」 その叫び声をかわいいなぁと言う顔はゆるみ、そして頭の中でゾロお別れねまた明日ねバイバイという声は消えた。 甘い空気を持ったまま帰路を急ぐ。 先ほどからゾロの足が蹴って音の鳴り止まないビニルまでもがきらきらと、まるで海であった。 それから目の前に広がる芝生。 現実などにありもしない光景は、夏の夢を大きくさせた。 <END> (あんなに毎日飲んでたのに…オロナミンCは炭酸だって、気付け私!) |