ああ言えばこう言う





少しでも強く引けば、その体は傾いた。
結局は何の抵抗もする気がないのだ、
そう思わずには居られないが、もしそれが自分の勘違いならば残酷すぎる、悲しくて泣いてしまうかもしれない。
それほど、無意識に。
奴はその筋肉質な頭を、胸に置いた。
「やめろ」
その言葉がこちらの胸に手を出すことなく、薄っぺらい布越しにその心臓を感じる。
「ゾロ」
胸が大きく膨らんだのは、どちらが先だったろうか。
とにかく苦しい、その理由を知りたくないのは多分どちらもだ(だってこんなにも有り得ない事をおおっぴろげにできるだろうか)、だからその理由を隠す為俺はその胸に大きく傾いた。

息が

下唇を食えば、天井を向いて光すら見えないほど目をつぶり、
全てを食えば、息にもならない喘ぎを生んだ。
「・・・・や」
めろ、と言わずとすれば、それは否定の言葉どころか。
と思えば少し奴を怒らせるような笑いをすることができた。
ああ言えばこう言う、あれが、
このような事に、呑まれてしまって余裕すらない。
再び嫌な笑いをゾロに見せる、それなのに、

息がまだ出来ない。

胸はもうほどいてしまったというのに


何かをひた隠しにしたとしても先を見れば快楽、それは深く、探ればすぐに落ちることが出来る。
逆らうことはどちらからも無く。
有り得ない筈なのに、
日増しに強くなるものと、小さくなるものは目に見える。
 
ゾロの抵抗は、今やすこしの言葉だけだ。





<END>



ことわざ小説と言って日記に載せたもの



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