外の空気は少しだけ気持ちが良くて、髪は大きく靡いて少し前が見えなくなった。 ドアを開けばまるで天国、海は小さく多く光を作り、全てを美しくさせる力をみせた。 それでもそれは地獄にしかならない。 寂しく泣く声すら聞こえてくるのにそれは光を増やしていく。 「食われるな」 そう少し笑って暗闇を見たその光る眼にとらわれたのは昨夜の事。 いつ何があってどうなるかなど分からない船の上ではそれは笑い事ではなかった。 サンジは嫌な顔をして煙草を吐き捨てた。 もしも失ってしまったら、などという仮説の話はよろしくない。 それでも少し、考えてしまった。 だから掻き消すように昨夜もいつもと同じようにゾロを抱いたのだ。 後ろからサンジの吐息を感じて、ゾロは暗闇に精子を吐いた。 何故、抱いたとか、何故抱かれたとか、いつの間にか考えない程まできた。 先など無くて怯えるのは自分らしくないと思いながらも海の輝きに慄いた。 自分は、ゾロが、好きなのだと。 失いたくないのだと。 短くもない煙草を捨てて、大きく仰いだ空の端に、小さな緑を見た。 合縁奇縁にもほどがある。 例えこれが短いものだとしても、少しだけそう思って生を感じた。 俺はまだ、生きている。 <END> 続かないことわざ小説 |