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心臓は今にも止まりそうだった。 その息はうなじをくすぐらせ、頭のどこかを痛くする。 こんな筈じゃあ、なかったんだよ。 そう心は叫んだが、状態は一向に良くならずに、涼しい夜を無闇に暑くするばかりだ。 運が悪かったと言えば良いのだろうか。 今まで2人で飲んだ酒はそう種類が無く、何も考えずにビールばかりを飲んでいたから、その事に気付かなかった。 ゾロはお酒に強かった。 それなのに今夜、サンジにとってはあまりにも残酷な時期、ゾロはサンジの家で酔った。 「何やってんだよーお前ー」 「てめえ、バカかよ。お前おれの寝る場所ねぇじゃんかよ」 「へーぇ??何?」 「ベッド。お前が、」 「んあぁ?これダブルベッドじゃん」 「は?」 「・・・・ははっ、恥ずかしがらずにおいでなさい。」 そう言ってサンジを捕えた両手は抱き枕を扱うように動いた。 ベッドに引きずり込まれた体は、あっという間にゾロに拘束されてしまって、何を考える暇も無かった。 その口が渇いて渇いて何度も唇を舐め始めたのは、ゾロの寝息が聞こえてからだ。 酔った上での悪ふざけだと思い込む頭はぼやけていく。 時期の悪さを呪うが、そんな事してもゾロを好きなのには変わりはない。 ため息をついた。 あれから、2時間が経った。 眠れないのは、この暑苦しい夜。 クーラーはもうとっくにタイマーが切れてしまった。 ・・・あれから、何度も何度も自分を戒めた。 決して眠気からではないその霞んだ意識は、後ろにある光景を作り出した。 潤えば良いのにそういかない唇が、その光景に、その寝息のもれるその唇に、潤いを・・・口づけを。 ・・・しちゃあ、もう、おしまいだ。 我慢は、し続けてきた。 酔ってるからと言い訳をするとしても、それでもサンジには残酷すぎた。 すぐにゾロを酔わせてしまったお酒の名前は思い出せない。 捨てる前にきちんと名前を覚えておこう、それからクーラーも入れて、今夜はソファで寝よう。 自分を拘束する腕に、腕を伸ばしてゾロから逃れようとする。 おねがいだから、その優しい感触を与えないで。 腕を動かせば、背中でゴソゴソっと動き、少し唸って更にサンジを締め付けた。 猫のように額を背中に擦り付ける。 目をそっと瞑って、痛む胸でゆっくり深呼吸をする。 体がもたない。 おねがいだから、これ以上君を好きにさせないで 「・・・・・・」 後ろで、寝言が聞こえた。 その瞬間、サンジは目をきつく閉じた。 今にも溢れそうな涙はこの暑さに渇ききってしまって、出るのは小さなうめき声だけだ。 まだ掴んでいた腕を自分の腰からゆっくり離してリモコンのあるテーブルまで静かに歩いた。 空になった瓶が、昨日の跡が残ったままだ。 振り向けば、きっと昨日のままのゾロが、子供のように寝ているんだろう。 愛しい唇はきっと少しだけ開いたままなんだろう。 ここには其れすら見る事の出来ない自分が居る。 振り返ってしまえば。 もし、もしそんなこと、もしも今許されたとしても、きっとこれから先、こんな風に転がる大量の瓶を見る事は無い。 あまりに残酷だ。 ・・・ゾロ、お前は最低だよ。 ソファに寝転がって、思い出した。 さんじ。 ・・・そう呟いた寝顔はどんな顔だっただろうか。 女の名前でも呼べば、冗談でその頬に触れられたかもしれないというのに。 ・・・もう、何もかも最低だ。 <END> サンジヘタレ <<<<<<<back |